《リビンマッチ》売主に関する注意点

不動産売買契約では、契約条項に先立つ前文において、誰が売主で誰が買主かを明確に定義するところから始まります。
売主は、原則的には登記上の所有者である必要があります。

売主の注意点とは

買主が登記上の所有者ではない人から所有権を移転・取得しても、実体がなく無効となってしまいます。
契約にあたって第一に注意することは、売主が登記上の所有者と一致するのか十分に確認することであり、もし一致しない場合には、そこに合理的な理由があるのかを検討する必要があります。
売主と登記上の所有者が一致しない理由には、「形式的に他人名義」になっている場合と、「実質的にも他人所有」となっている場合があります。

形式的に他人名義となっている例として、登記上の所有者が死亡して相続が行われ、現在の実質的な所有者は売主となっているのですが、相続による所有権移転の登記が済んでいない、といったことがあります。

このような場合では、遺産分割協議によって売主が正当に相続していることを確認したうえで契約を締結します。
そして不動産売買契約書の契約条項の第1条に、「本物件は、売主が、現在の登記名義人である”(故人の氏名)”より相続したものであって、引き渡し日までに、相続登記を完了するものとする」という文言を追加しておきます。
また他のケースとして、所有名義人の姓や住所が結婚などによって変わったにもかかわらず、登記上の表示が元のままになっていることがあります。

こういった場合には、住民票などによって本人であると確認できてから契約を結びます。
買主の所有権移転登記の前提として、登記名義人の氏名の変更登記が必要となりますが、この場合は別人ではなく本人ですので、その変更義務は売買契約書に記載するほどではないと考えていいと思われます。

一方、実質的に他人所有の場合ですが、不動産売買ではその特性により、契約から一定期間をおいて代金支払い・引き渡しを行うことは少なくありません。

ですから売買契約時には他人所有の物件を、あとになって売主が取得してその後に買主に売り渡し移転する、という契約も実際には数多く存在していて、法的にも問題にならないようになっています。

不動産売買ではこういった時間差が生じますので、民法でも現行法の第560条に「他人の権利の売買における売主の義務」として、これを想定した条文を設けています。

そして2020年から完全施行される改正民法では、この第560条は改正民法第561条となり、物件の「一部」が他人所有の場合でも、売主は所有権をいったん完全に取得して、その後に買主に引き渡すことを明文化しました。
このような規定となっていることから、転売を目的とした不動産業者が転売先である買主との約定を確定させるために、他人所有の物件を売買契約することがあります。

この場合においては、引き渡し時までに売主が売買物件の所有権を取得できないというリスクもあり、他人所有の物件売買はいわばプロの業者のための契約形態といえるため、一般的にはあまり勧められません。

また、その他のパターンとして、登記上の所有者が共有名義となっている場合があります。
売買物件が共有の場合には、共有者全員の合意がなければ、売買契約は有効なものとして成立しません。
契約の実際の交渉相手は、共有者のうちの一人であることが多いと思われますが、最終的にはその背後に存在する他の共有者全員の意思確認と、全員との合意が必要となります。

売買物件となる土地が、土地区画整理による「保留地」である場合も例外です。
土地区画整理による保留地とは何なのか、まずは土地区画整理事業の説明から始めます。
古くからある土地の場合、建物を建てるには形が良くなかったり、道路が狭すぎるなど、使い勝手の悪い土地が入り乱れているというケースが存在します。

そういった土地をまとめて整地し、使いやすい形状の土地に区画整理する事業のことを土地区画整理事業といいます。
この土地区画整理によって生み出されるのが「仮換地」と「保留地」です。

土地区画整理の工事が行われると、従前地(工事前の土地)の区画・形状はなくなってしまいます。
仮換地とは、従前の土地の所有者が引き続き継承する土地で、工事の期間中において完了した部分から順に「仮」に設定され、土地区画整理事業が完了すると晴れて「換地」となります。

仮換地は、区画・形状を使いやすくきれいに整えるために、多少従前の土地よりも狭くなるのですが、区画整理事業による土地の価格の上昇によってその分は相殺されて損失は出ないと考えられています。

ここで仮換地が狭くなった分の余った土地が、所有者のいない「保留地」として誕生します。
保留地には、換地処分が行われるまでは登記がないため、登記簿により売主の確認ができません。
しかし、保留地の売主は土地区画整理組合や地方公共団体などであり、買受にあたっては問題となることはありません。

不動産売買契約を締結するにあたり、売買物件の登記上の所有者を確認することは非常に大切なことです。
所有者が売り主本人である場合には特に問題ありませんが、不動産という財産権のもつ特性によって、それ以外のいくつかのパターンが存在することを知っておくことは大変重要です。
せっかく作った契約書が無効にならないように、これらの知識を踏まえて売主に関して確認する注意を怠らないようにしておく必要があります。

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